まちネタ

欧州自転車雑感(自転車利用環境編)

金沢の街が、もっと好きになる。

金沢レンタサイクルまちのり。

 

先週水曜日はローマからお届けしましたmkでございます。一昨日、無事帰国しまして、久々に金沢の空気を吸いました。やや時差ボケも残っておりますが、やっぱり日本、とりわけ金沢が落ち着きますなぁ。けど、ヨーロッパの各都市は本当に素晴らしかった。またいつか行きたいと思います。

ということで、今回は、視察先でみつけた自転車利用環境についてご紹介しますね。

わたくしが同行させていただいた視察研修は、自転車利用環境に限らず、都市インフラ全般を学ぶものであり、自転車だけに特化した視察ではなく、具体的なところまでは掘り下げて調べておりません。あくまで個人的かつ表層的な雑感であることをあらかじめご了承願います。

 

まずは、イタリアのナポリ。

写真はバスの車窓から撮影したものであり、不鮮明ですが、道路の右端に自転車マークの路面表示が並んでいます。イタリアは自動車のドライバーの運転マナーが悪く、旧市街地は道幅が狭くて石畳の道が多く残っていることから、自転車にとってはあまり好ましくない状況。しかし、これらの歴史的インフラがあるからこそ、魅力的な街なのだと思います。「せめて路面表示だけでも設置しよう」という意識は、我が国の狭い道路空間にも応用できそうですね。金沢市では実際にその思想で次々に自転車通行空間整備が行われています。

 

次に、スイスのブリーク(Brig)。

ここは、鉄道の乗り継ぎのためにわずか30分だけ降り立った街でしたが、山間の非常に美しい街でした。中心部はライジングボラードで自動車の進入を抑制し、歩行者、自転車、公共交通(バス)は入れるようにしています。自転車通行空間は、黄色いラインと自転車マーク。ほとんど消えそうでしたが、石畳なので、消えるたびに何度も重ね塗りしているのがわかります。「自転車とまれ」の標識もGOODですね。

ついでに、ライジングボラードとブリークの美しいまちなか。

 

次に、スイスのクール(Chur)。

これまた、鉄道からバスへの乗り継ぎのためにほんの少し立ち寄った街でしたが、ブリークと同じく駅前の目抜き通りは自動車をシャットアウトし、歩行者や自転車に優しいまちづくりが実践されています。駅前通りは両サイドに商店が立ち並んでいますが、小規模でデザイン性の高い駐輪スペースを点在させることで、自転車利用者のアクセス性を高めています。日本の商店街では、自転車の走行を禁止しようとするところが多々見られますが、自転車もお客様の大切な交通手段。このようにうまく共存できればいいのになぁと思いました。まぁ、自転車の台数は日本の方が圧倒的に多いので難しい問題ですね。

下の写真は歩行者ゾーンの標識と路面表示。しかし、補助標示で自転車マークの横に「gestattet」という文字。これはドイツ語で「許可」を意味しており、自転車も通行できることを指しています。ちなみに、スイスではドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4つが公用語となっています。

 

続いて、ドイツのフュッセン。

ロマンチック街道最南端の小さな町。人口1万5千人程度の小さな街ですが、中心部にはお店が立ち並び、夜もウィンドウショッピングができるよう灯りがともされています。パン屋さんやカフェも多く、朝から賑わっており、まさに日本の地方都市が目指すべきコンパクトな街が形成されています。ここでも自転車の扱いはやさしく、自転車走行指導帯のような車道での通行空間だけでなく、歩道上で分けるパターンも見られ、道路空間にあわせて柔軟に対応していることがわかります。細街路との交差点部分には赤く着色をして、ドライバーへの注意喚起がなされています。

ついでに、フュッセンの美しい街並み。

 

最後に、ドイツのライプツィヒ。

旧東ドイツの主要都市であり、17~18世紀に活躍したゲーテやシラーなどの世界的思想家、メンデルスゾーン、バッハ、ベートーベンなどの世界的音楽家にゆかりの深い街。人口は約50万人であり、金沢市とほぼ同等です。第二次世界大戦で大きな被害を受け、さらには東西統一後に急激な人口減少を記録しましたが、計画的・戦略的な都市縮小の取り組みにより、賑わいを取り戻しつつある街です。歩行者や自転車、トラム(路面電車)、バス、自動車など多様な人々が行き交う道路上ですが、自転車の走行空間をできる限り確保しようとしているのがわかります。下の写真は、幹線道路の一部区間。歩行者、自転車、自動車が完全分離されており、快適な空間となっています。右側は商業施設なので、要所に小規模な駐輪スペースも確保されています。

一方、幅員が狭い道路では、下の写真のような指導帯パターンも存在します。

また、交差点部では、自転車が直線的に横断できるよう配慮されており、自動車の直進レーンと右折レーンの間に自転車通行空間が設けられています。大きな交差点では自転車専用信号も。素晴らしい!

ついでに、ライプツィヒのマルクト広場と、バッハが長年にわたり「カントル」(教会音楽家)を務めた聖トーマス教会。

 

以上、自転車利用環境に関する雑感でございました。欧州各都市でも自動車の利用は多く見られますが、交通規制に「メリハリ」があり、まちなかではほとんどのエリア(線ではなく面)が「ゾーン30」などの低速度規制が敷かれており、フュッセンなどでは街の縁辺部にきちんと駐車場が設けられています。そこに自動車を置いて、まちなかは歩く、あるいは自転車に乗る。ということが徹底されているように感じました。自動車をいじめるのではなくて、「その地域に応じて適切な交通手段を選ぶ」ということが大事であり、欧州各都市の市民の皆さんにはその感覚が幼いころから身についているように感じました

このほか、「まちのり」と同じく自転車のシェアリングを実施しているところもありましたので、次回はその話題を中心にお届けできればと思います。

ああ、早くも欧州に行きたくなってきた(笑)。それでは、また次回をお楽しみに♪